【実施報告】8月11日(祝金)日本語学習者・支援者のための集い「日本語学習の現場における近年の変化や課題~これから求められるものとは~」

 

◆日時: 2023年8月11日(祝金)13:00~16:30
◆場所: 2階プラザホール
◆講師: 中村ノーマン氏、美濃屋裕子氏
◆参加人数:72名(講師2名、あーすぷらざ職員7名、インターン大学生3名含む)

◆実施内容:
◇第1部
【講演Ⅰ】中村ノーマン氏(50分)
「コロナ禍による日本語学習の困難と克服、そして未来を考える」と題して講演いただきました。

【講演Ⅱ】美濃屋裕子氏(50分)
「外国につながる子ども・若者の現状や課題~教育現場から見えるもの~」と題して講演いただきました。

◇第2部
【トークセッション】(60分)
 席の近い方同士(4~5名)で、日本語学習についての課題や工夫等、現場で感じていることについて話してもらいました。そのあといくつかのグループから内容を発表してもらい、あがった話題を取り上げながら講師と参加者とともに考える時間をもちました。

◆成果:
 第一部の講演では、まず中村氏より多文化共生にむけての現在の日本社会の実態や課題、今後目指すべき姿など、広い視野でお話いただきました。子どもの学習支援において「一人ひとりを見る」重要性について繰り返し触れ、学年や年齢で力量をはからないことや、見た目では分からない子どもの心を探り、出してもらえるよう関係性を築く大切さを会場の参加者へ伝えてくださいました。また、日本語学習の場に来られる目の前の人だけではなく、その場に来られない人の存在にも思いをはせることや、明日のことが分からない人が増加している実態と合わせて、日本のこれからの社会のあり方について考えるきっかけを投げかけてくださいました。

  

 美濃屋氏からは、実際に出会ったケースをエッセンスとして取り入れ作成されたフィクションの事例をもとに、それぞれの問題や課題、複雑にからみあう母国の文化や価値観などにも触れながら、一つひとつのケースに対しどのようにアプローチし、対応してきたか具体的な話をしていただきました。アルバイトで家計を支えたり、学校を休んでも家事労働を優先したりする子どもの姿から見える文化の違い等について、親がもつ母国での家族の在り方や価値観を尊重しながらも、現実として子どもが経験している日本語で学ぶ大変さの違いをまずは親に理解してもらえるよう丁寧に説明をすることや、無力感に陥った子どもをエンパワーメントする際、迷ったときは「子どもの権利条約」に立ち返り対応している話があり、スクールソーシャルワーカーとして外国につながる子ども・若者たちと日々奮闘しながら向き合っている様子をうかがうことができました。

  

 第二部のトークセッションでは、数名のグループになり自己紹介をしたあと「いま不安なこと・困っていること・うまくいったこと」というテーマを選びグループで自由に話してもらう時間をもちました。その後グループから出た意見の「在県でない高校にいる外国ルーツの子どもへの支援」については「まずは学校にいるSSWに相談することや、あーすぷらざ相談窓口の活用、地域との繋がりをつくる」提案があがり、「在日歴の長い大人の方の学習支援について」は「小さなスモールステップを設定する」アドバイスがありました。他にも「地域の学習支援と、学校や教育現場とどのように繋がりをつくるか」という課題については「担任の先生などに見学に来ないか誘ってみる」提案があり、もしその時に繋がらなくとも存在のアピールになるという講師からのアドバイスは、当相談窓口が今後さらなる地域との連携を目指しアウトリーチしていくうえで大変参考になる考え方であると感じました。

 イベントが閉会したあとも会場をオープンにする時間を設けたことで、講師へ積極的に質問をする参加者の姿があり、また参加者同士で情報交換をする様子もうかがえました。本イベントの目的のひとつに掲げた “支援者間のネットワーク構築”も達成できたと感じています。